第5章 遭遇
先生はこの訓練を始める前に幾つかの注意事項を伝える。
「皆さんご存じだと思いますが、僕の"個性"は"ブラックホール"。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます。その"個性"でどんな災害からも人を救い上げるんですよね」
麗日さんが激しく首を縦に振る。
首、取れちゃわないかな。
そんな風に思っていると、13号先生は声のトーンを少しだけ落として静かに言った。
「しかし簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう"個性"がいるでしょう」
その言葉に、私達生徒の間に緊張が走った。
13号先生は言った。
超人社会である今の時代は、"個性"の使用を資格制にし厳しく規制することで一見成り立っているようには見えるが、一歩間違えれば容易に人を殺せる"いきすぎた個性"を個々で持っていることを忘れないように、と。
体力テストでは自分達の力が秘めている可能性を知り、戦闘訓練ではそれを人に向ける危うさを体験をした今、救助訓練では人命のために"個性"をどう活用するかを学んでいこう、と。
「君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない。救ける為にあるのだと心得て帰って下さいな」
そう言って頭を下げる13号先生に拍手が巻き起こった。
私も自然に拍手をしていた。