第5章 遭遇
私は、軽く息を吐いて彼の名を呼んだ。
不機嫌な返事が返って来たけど、私は最終手段を口にした。
「私、雄英に受かったよ」
「?だからなんだよ……」
「約束、覚えてる?」
瞬間、爆豪くんの顔があり得ないほど引きつった。
私もついさっきまで忘れてたけど、私と爆豪くんはとある賭けをしていた。
私が雄英に受かったら1万、落ちたら3万という賭博の他に「受かったら一つだけ言うことを聞く」というもの。
金銭もまだ受け取っていないけど、この約束も遂行されていない。
貴重とも言える命令を私はここで使おうと思う。
「おい、……」
「約束破るの?」
「…………ここで本当に使っていいんか?」
「うん。使うよ。なんでそんなこと聞くの?」
「期末テスト」
ぴしっと私の動きが止まった。
それを見た爆豪くんが怖い笑みを浮かべる。
「今の段階で躓いてるってこたぁ、期末テストの結果は散々なもンだろーな。そん時まで取っておかなくていいのか?」
たしかにそうだ。
期末テストを考えるとこんな宿題ごときに爆豪くんの頭脳を借りてもいいのだろうか。
でも、この問題がわからないと提出できずに詰んでしまう。
そうすると相澤先生が……。