第5章 遭遇
私はもう一回扉をノックした。
返事はない。
でも絶対部屋にいる。
ノックしても返事がないことはもうわかったから、私は勝手に扉を開けて爆豪くんの部屋に足を踏み入れた。
「無視しないでよ」
「勝手に入ってくんな」
「ノックしたよ」
「返事してねえだろ」
爆豪くんはやっぱりまだ起きていて、なんなら私と同じで宿題をしていた。
もしかしたら予習かもしれないけど。
宿題教えて、という前に彼は「断る」ときっぱり口にした。
「このままだと先生がまた私のこと憐れむような目で見てくるんだよ」
「知るか。テメェ自身の頭の悪さを恨め」
ハッ、と鼻で笑う爆豪くんに私は少しだけ唇を尖らせた。
爆豪くんは知らない。
相澤先生のあの目を。
怒るわけでもなく、哀しむわけでもなく、ただただ私を見つめるその瞳の怖さを、申し訳なさを。
私だって先生を呆れさせたいわけじゃない。
何なら少し褒められたいとも思ってる。
先生もそれをわかっているから、何も言えずに憐れむような目で私を見ていることを私も分かっている。
それがどれだけ虚しいか。