第2章 それは「運命」で「偶然」で「必然」の出来事。
通報を受けたヒーローたちが商店街に駆け付け、尻餅をついている私を保護してくれたが、捕らわれている爆豪くんを誰も誰一人として助けてくれなかった。
ベトベトするヴィランを掴めないうえ、爆豪くんが"個性"で抵抗しているから、ヴィランを倒すことも爆豪くんを救助することもできず、周りの被害を抑えることで精一杯になっている。
たくさんのヒーローがここに居るのに、この状況を解決できるヒーローは誰一人としていない。
「すげー!なにアイツ、ひょっとして大物じゃね!?」
「頑張れヒーロ~~~~~~!!」
騒ぎを聞きつけた野次馬は、まるで他人事のようにただ傍観するだけ。
助けられて当たり前、と言った彼らにふつふつと何かがこみあげてくる。
私を庇ってくれた爆豪くん。
そんな爆豪くんが一人で苦しんでいる。
救けを求めている。
まるで、あの頃の私のように―――。
「馬鹿ヤローーー!!止まれ!!止まれ!!!」
突然の怒号に、びくりと肩が震えた。
悲鳴やざわめきが急に耳に飛び込んできて、頭の中は何が起きたか理解できずに混乱していた。
どうやら誰かがヴィランに向かって走り出したらしい。
なんて無謀な。
ヒーローが太刀打ちできないのに、ただの一般市民に一体何ができると言うのだ――――――野次馬の隙間から見えた後姿に目を疑った。