第2章 それは「運命」で「偶然」で「必然」の出来事。
「緑谷くん……!?」
ヒーローでさえ何もできずにいる状況なのに、なんで"無個性"の緑谷くんが飛び出しているんだ。
無謀どころの話じゃない。
それに、爆豪くんはいつも緑谷くんをいじめていたじゃん。
なんで自分の事を擲ってまでそこまでするの。
理解できずに呆然と見つめていると、緑谷くんはヴィランに向かってカバンを投げつけた。
「なんで!!てめェが!!」
「足が勝手に!!何でって……わかんないけど!!!」
この時、なぜか私の頭の中に浮かんできたのは、彼が言い続けてきた、彼が言われ続けてきた言葉の数々だった。
"僕も早く個性が出ないかな"
"どんな困ってる人でも笑顔で救けるんだよ"
"オールマイトみたいな超カッコイイヒーローになるんだ"
"僕が超かっこいいヒーローになってちゃんのことも守れるヒーローになったら、その時はさ……"
"いずくって個性がないんだって"
"無個性のやつがヒーローになれるわけないじゃん"
"羽根のない鳥に空を飛べって言ってるようなもんだよな"
"諦めた方がいいよ、みてるこっちが苦しくなる"
何もできずに傍観する野次馬や私達とは違い、何もできずに増援を待つしかなかったヒーローとは違い、緑谷くんだけが、"無個性"で何も持たない彼だけが、この状況を解決しようと藻掻き足掻き続けている。
その理由はとても単純明白で。
ただ、爆豪くんが―――。
「君が、救けを求める顔してた」
今にも泣きそうな笑顔を浮かべる緑谷くんは、あの時と何一つ変わってなどいなかった。