第5章 遭遇
このまま混乱状態が続けば下手したら死人が出てもおかしくない。
もしかしたら怪我人くらいでているかも。
一体何が原因で警報が鳴ったんだろう。
まさかヴィラン……?
だとしたらアナウンスの一つや二つあっても……。
いやまずはこのパニックを落ち着かせることが優先だ。
でもどうやって……。
人の波に流されながら、酸欠になりながら、ぐるぐると頭の中で打開策を考えている時だった。
食堂に男性の大きな声が響いた。
「大丈ー夫!!」
声のする方を見ると、非常口の上に飯田くんが張り付いている。
どうやら雄英の校舎内に侵入したのはマスコミのようで、危険性はないことを短くもわかりやすく教えてくれた。
オールマイト見たさの行き過ぎた行動だったらしく、少し怒りを含んだような、どこか呆れたような表情で帰りのHRで相澤先生がその後の事を説明してくれた。
いい迷惑だなとぽつりと呟いた瀬呂くんの言葉に何人かが心の中で同感したのは言うまでもないだろう。
その後、この一件があり委員長は緑谷くんではなく飯田くんへと変わった。
緑谷くんが指名したのだから"正しい"んだろう。
それにしても一体どうやって校舎内に入って来たんだろう。
雄英のセキュリティはそう簡単に突破できるものではないはずなのに。
考えてもわからないことを考えると頭が痛くなる。
私は首を横に振って、雑念を振り払った。
今頃先生方が対処してくれているだろうし。
今は自分のことに集中しよう。
除籍まっしぐらなことが私にとって一番の問題なんだから。