第4章 戦闘訓練
「これだけは、君には言わなくちゃいけないと思って……!」
声を震わせて言葉を紡いでいく緑谷くんは暫く俯いていたが、覚悟を決めたように爆豪くんを見つめる。
夕日に照らされた緑色の瞳は弱弱しく揺れているけど、その奥には強い意志を感じた。
ゆっくりと息を吸い込んで、彼は静かに口を開いた。
「人から授かった"個性"なんだ」
人から……授かった……?
「誰からかは絶対言えない!言わない……。でも、コミックスみたいな話だけど本当で……!」
緑谷くんは堰を切ったように言葉を並べる。
全然モノにできていない状態の"借り物"で、それを使わずに爆豪くんに勝とうとした、と―――。
「いつかちゃんと自分のモノにして、"僕の力"で君を超えるよ」
先ほどの震えていた姿はどこにもない。
不安な表情も微塵もない。
力強く燃えゆる瞳が爆豪くんを見据える。
きっと緑谷くんには緑谷くんの思うところがあるんだろうけど、彼の意思表明は今の爆豪くんのプライドをもっと傷つけてしまうだけの行為にしか見えない。
だって、結局爆豪くんは……。
「なんだそりゃ……?借りモノ……?わけわかんねぇ事言って……。これ以上コケにしてどうするつもりだ……なあ!?」
強く拳を握り締める爆豪くん。
悔しさやいろんな感情があふれ出ているのがわかった。
「今日……俺はてめェに負けた!!!そんだけだろが!そんだけ……」
いつもの感情的になって怒る姿とは違う。
だって、あの強きで自信満々な爆豪くんの声が揺れているから。
「氷の奴見てっ!敵わねえんじゃって思っちまった……!!」
それは、はじめて見せる弱気。
そんなことないよ、なんて軽率なことは言えなかった。
だって彼は本当に悔しがっているから。
無意味な慰めほど惨めな気持ちにさせることを私は知っているから。