第4章 戦闘訓練
「廻、ちょっといいか」
「あ、うん。どうしたの、常闇くん」
帰り支度をしている私のところに常闇くんがやって来た。
少し言いづらそうな表情をしている彼に首を傾げていると、常闇くんの後ろからダークシャドウがひょこっと顔だけ出している。
「お花、出せル?」
「お花?」
ダークシャドウの唐突な質問に頭の中はハテナが浮かんだ。
お花がだせる、とは……。
ぐるぐると回る思考だったけど、ダークシャドウの言いたいことが漸く分かって、「出せるよ」と頷いた。
どうやら先ほどの訓練で、ダークシャドウは降ってくる花に気を取られてしまったらしく、何ならはしゃいでいたと言う。
無邪気にはしゃぐダークシャドウを想像するだけで可愛いなと思うけど、それを叱っている常闇くんを想像するともっとかわいく見える。
暴れる犬を制御する飼い主みたいでほっこりする。
ワクワク顔のダークシャドウの前で、私は両の掌を見せぐっと握る。
左右に何度か動かして掌を広げれば、先ほどまで何もなかった手にはピンクや白の花がポロポロと掌から溢れる。
「踏影!!こレ、すごイ!!キレイ!!」
「もしよかったらあげるよ」
「ヤッタ!!」
純粋無垢な子供のように喜ぶダークシャドウと間近で手品を見ていた常闇くんの驚いた表情が面白くて、小さく笑みを零した。
こんなふうに手品をして喜んでもらえるなんて思ってなかった。