第3章 はじまりの季節
誰も何も言わなかった。
私の最下位はほぼ確定したようなものだったから。
そして緑谷くんの番へとなった。
彼もまたこのままでは大した結果を残せないまま終わってしまう。
みんなの視線が緑谷くんに集中した。
「46m」
「な……今確かに使おうって……」
「"個性"を消した」
"個性"を消す"個性"。
それが相澤先生の力。
抹消ヒーロー・イレイザーヘッドと呼ばれているプロヒーローのようで、私は初めて聞いたヒーロー名だ。
それよりも、相澤先生は今「個性を消した」と言った。
どういうこと……だって緑谷くんは無個性で、個性を消すことなんて……。
「つくづくあの入試は……合理性に欠くよ。おまえや廻のような奴も入学できてしまう」
深く息を吐きながら相澤先生は緑谷くんに近づく。
「見たとこ……"個性"を制御できないんだろ?また行動不能になって誰かに救けてもらうつもりだったか?」
「そ、そんなつもりじゃ……」
「どういうつもりでも周りはそうせざるをえなくなるって話だ。昔、暑苦しいヒーローが大災害から一人で千人以上を救い出すという伝説を創った。同じ蛮勇でも……おまえのは1人を救けて木偶の坊になるだけ。緑谷出久。おまえの"力"じゃヒーローにはなれないよ」