第3章 はじまりの季節
種目は、ソフトボール投げ、立ち幅とび、50m走、握力、反復横とび、上体起こし、長座体前屈の計8種目。
中学の頃から体力テストはやっていた。
しかしそれは"個性"なしのテスト。
「国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けている。合理的じゃない。まぁ、文部科学省の怠慢だよ」
この個性把握テストの目的はまず自分の「最大限」を知ること。
知る事でヒーローの素地を形成する、それが相澤先生の目的だった。
ヒーローを目指すなら、今の自分に何ができて何ができないのか。
できることは伸ばし、できないことは克服をする。
まるで課題みたい。
左腕に巻いた腕時計にそっと触れ私は静かに息を吐いた。
その間、爆豪くんは相澤先生から受け取ったソフトボールを握り思い切りぶん投げていた、「死ね」という言葉と共に。
記録は705mという驚異的な数字が叩きだされ、これには他の人たちも沸き立った。
個性を使えることに「おもしろそう」という感想が漏れた時、先生の表情が一変した。
「面白そう……か。ヒーローになるための3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?よし、トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し、"除籍処分"としよう」
その言葉に、先ほどまでの楽しそうな雰囲気は消え去り緊張が走る。
どうしよう……。
ランダムで武器が具現化するギャンブルの個性を持つ私は焦りの色を隠せない。
種目を見る限り、私の個性でそれらしい記録が出そうなものは何一つとしてない。
「生徒の如何は俺達の"自由"。ようこそ。これが、雄英高校ヒーロー科だ」
入学式初日の大試練を前に、私はただ立ち尽くして呆然とするしかなかった。
本当に、どうしよう……。