第3章 はじまりの季節
相澤消太。
先生はそう名乗った。
雄英の教師は現役のプロヒーローというのだから、この人もプロヒーローなんだろうけど、見たことないな。
あんまりテレビに出ない人なのかな。
先生は寝袋の中から体操服を取り出し、グラウンドに出る様に指示を出す。
入学式に出なくていいのかという疑問が頭に生まれたが、それを聞ける雰囲気ではない。
指示通りに私たちは更衣室でジャージに身を包んだ。
「急にグラウンドに出ろだなんて……」
「一体何をするのかしらね」
不安な気持ちが自然と零れてしまう。
グラウンドで入学式をやるのだろうか。
でも、ジャージで出席するなんて聞いたことがない。
本当に何が始まるんだろう。
緊張した面持ちでグラウンドにでると、男子は既に全員集まっていた。
全員揃ったことを確認した相澤先生は「個性把握テストをする」と、なんの説明もなしに告げた。
ヒーローになるには、入学式もガイダンスもそんな悠長な行事に出る時間はない、それが先生の言い分だった。
「雄英は"自由"な校風が売り文句。そしてそれは"先生側"もまた然り」
いくら自由が校風とはいえ、自由すぎるでしょ。
とは言えなかった。