第3章 はじまりの季節
毎年300を超える倍率。
一般入試定員36名、18人ずつで2クラスしかない。
だが今年は例年と違い、一般入試合格19名、推薦合格2名の計21名がA組に在籍している。
疑問を抱かなかったわけではない。
だが考えても答えなんて出てこないため考えるのを辞めた。
入学式が始まるまで時間がある。
春の暖かい陽気の心地よさに大きく欠伸をした。
その時だった。
「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の制作者方に申し訳ないと思わないか⁉」
「思わねーよ!てめーどこ中だよ端役が!」
登校初日に爆豪くんと眼鏡を掛けた少年がなにやら言い争いをしている。
他の生徒の視線を集める中、私は扉付近で固まっている緑谷くんを見つけ席を立ち上がり近づく。
「おはよ、緑谷くん」
「おはよう、ちゃん。一緒のクラスだったんだ」
「爆豪くんも一緒だよ」
「そう……みたいだね」
はは、と乾いた笑みを浮かべる緑谷くん。
幼馴染のはずなのに、畏怖と嫌悪と頑固がぶつかりあって彼らの溝は深まるばかり。
それは私も似たようなものか。
無理に仲良くしてほしいなんて思わないけど、せめて昔みたいになんのわだかまりもなく話はしたいな。
心の中で静かにそう思った。