第3章 はじまりの季節
2人の事が気になって、私は静かに彼らの後をつけた。
校舎裏では爆豪くんが緑谷くんの胸倉を掴んで叫んでいた。
「どんな汚え手使やあてめえが受かるんだ、あ!!?」
「っ……!!」
「史上初!唯一の雄英進学者!!俺の将来設計が早速ズタボロだよ!他行けっつったろーが!!」
泣く子も黙る剣幕で緑谷くんに怒鳴る爆豪くん。
いつもであれば、ここで緑谷くんは瞳に涙を浮かべて謝罪の一つや二つを口にするだろう。
しかし、今日は違った。
胸倉を掴んでいた爆豪くんの腕を掴み、真っすぐ彼を見つめる。
「いっ……っ、言ってもらったんだ」
今にも泣きそうな表情だけど、その瞳は力強く見えた。
「"君はヒーローになれる"って……!"勝ち取った"んだって……!だ……だから……僕は、行くんだ……!!」
いつも爆豪くんの後ろをついて歩いていた緑谷くんが。
なにもできずに泣きべそをかいていた緑谷くんが。
そんな緑谷くんの気迫に、爆豪くんは押されてしまったのか言い返す事ができずにいた。
だけどそのことを認めたくなくて、認められるはずもなくて、爆豪くんは盛大な舌打ちと共に、緑谷くんの胸倉を乱暴に放した。
緑谷くんは何もされなかったことに安堵のため息を吐いて、壁伝いにへなへなと座り込んだ。
その様子を物陰から私はずっと眺めていた。