第3章 はじまりの季節
――廻side――
それから一週間後。
爆豪家に2通の手紙が届いた。
それは雄英高校からのもので、光己さんから手紙を受け取り私達は自室へと戻った。
手紙の中には一枚の紙と小型のプロジェクターが同封されていて、私は書類を確認する前に、プロジェクターのスイッチを入れた。
ブン、と起動する音の数秒後に、右目に大きな傷のある、ネズミのような犬なのか熊なのか、よくわからない姿をした人物が映像の中に映しだされた。
『はじめまして。私は雄英高校の校長、根津なのさ。早速だけど廻さん、受験の合否を発表させてもらうよ』
心臓は大きく鼓動を繰りかえし、掌は無意識のうちに強く握りしめていた。
身体は硬直し、肌に纏わりつく空気が自分の体温を下げているような気さえした。
この時私は、初めて自分が緊張しているということに気が付いた。
『筆記試験、実技試験ともに、"合格"なのさ。ようこそ、雄英高等学校ヒーロー科へ!!』
合格。
その二文字の言葉を頭で理解するのに数秒、時間がかかった。
合格すること以外、頭にはなかった。
不合格だった場合のことなど考えてはいなかった。
だけど、それでも、まさか本当に自分が雄英のヒーロー科へ入学できるとは思っていなかった。
『入学の手続きや書類などは後日、送らせてもらうのさ。今は合格した喜びを嚙みしめるといいのさ。本当におめでとう。僕達は君の入学を心待ちにしているよ』
映像はそこで途切れた。