第3章 はじまりの季節
――Other side――
実技入試はヴィランの総数も配置も受験者には伝えていない。
たった10分という限られた時間の中と広大な敷地の中で、必要となってくるもの。
状況をいち早く把握するための情報力。
現場へいち早く到着するための機動力。
瞬時かつ冷静な判断力。
そして純然たる戦闘力。
どれも市井を守るための"基礎"能力に過ぎない。
それが今、受験生たちにポイントという形であぶりだされている。
「今年はなかなか豊作じゃない?」
「いやー、まだわからんよ」
「真価が問われるのは……これからさ!!」
受験者をモニターで見ている審査員たちは、彼らの奮闘する姿に温かい眼差しを向けている。
誰もがヒーローになってもおかしくない。
ここにいる皆、ヒーローの素質がある。
だが、これは試験。
受かる者もいればもちろん落ちる者だっている。
偉大なヒーローになるために、より高みを目指し精進する者だけに道は開かれる。