第3章 はじまりの季節
D会場に着いた私はその広さに目を見開いた。
街一つ分の大きさに驚いたのは私だけではないようで、他の受験生も皆、圧倒されているようだった。
緊張している者、緊張をほぐそうとしている者、自身満々な者、抱える気持ちは人それぞれ。
軽く息を吐き、会場に来る前に発動させた"個性"で具現化した武器を握った。
拳に握られているのは、ハンドガン2丁。
これで仮想ヴィランが倒せるかはまだ分からないがやるだけやるしかないことは確か。
会場の扉付近に立ち、その扉が開けられるのを待っていると、重たそうな見た目とは裏腹に、それは音もなく軽やかにゆっくりと開いた。
扉が開いたと同時に会場の中に足を踏み入れる。
すると、「何勝手に入ってんだよ」「まだ合図されてないだろ」「減点対象じゃん」「自滅乙」という言葉が耳に届いた。
扉が開いたってことは入っていいってことじゃないのかな。
それに……。
「現場でも同じことが言えるの?」
試験だろうが模擬演習だろうが関係ない。
現場に入ってしまえば、ヴィランが現れれば、その場で対処しなくちゃいけない。
爆豪くんが襲われた時のように、あの時のように、お行儀よく丁寧に毎度のごとく予告して現れるわけじゃないんだから。
私は人一倍知っている。
ヴィランは、前触れもなくやってくると言う事を。
私は人一倍知っている。
ヴィランは、身近にどこにでもいるという事を。