第3章 はじまりの季節
入試を受けに来た他の学校の生徒は、爆豪くんの姿を見るなり、「ヘドロの時の奴じゃね?」「バクゴーって言ったっけ?」「本物じゃん」と小さな声で野次馬のごとく話始める。
数か月前のことなのに、今もまだこんな風に言われているのを見ると、彼の代わりに言い返したくなる。
本当は爆豪くんだって、今すぐにでも怒鳴り散らして爆破したいんだろうけど、今日は大事な日。
偉大なヒーローになるためには雄英卒業が絶対条件。
そこらへんにいるようなただのヒーローなんて、彼は目指していない。
彼が目指すヒーローはオールマイトをも超える絶対的No.1ヒーロー。
その夢を、目標を、素行のせいで壊されたくない。
だから、何もせずに我慢をしているんだ。
入試会場に向かい、試験が始まるまでの短い時間の中で私は単語帳を開いて勉強していた。
少しでも点数をあげておかないと。
いくら成績が上がったとはいえ上限は見えてくる。
その証拠に入試前最後の模試では判定は「C」で、その評価に絶望したのは記憶に新しい。
「はっ。今更復習したところで結果は分かりきってんだろ」
「話しかけないで、爆豪くん。覚えたこと全部忘れちゃう」
「記憶力ゴミかよ」
そんなことを話していると、サングラスを掛けトサカのように逆立った金髪が特徴の男性が壇上に上がった。
プロヒーローのプレゼント・マイクだ。
雄英は現役のプロヒーローが教師をしていると聞いたけど、目の前に本物がいると、感動するな。