第2章 それは「運命」で「偶然」で「必然」の出来事。
「私、ヒーロー目指す」
夕食の席で、私は静かにそう言った。
驚いた顔が3つ私を見つめている。
「え、な……、え?ヒーロー?」
「なんでいきなり……あ、いや、否定とかではなく、今までそういう話……」
光己さんと勝さんが分かりやすく動揺しているが、至極真っ当な反応だ。
私は今までだって一度たりとも自分からやりたいことや将来のことを口にしたことなどなかった。
光己さんと勝さんはお互いに顔を見合わせて、どう返答するべきかを考えているように見えた。
その反面、爆豪くんは舌打ちをして私を睨みつけ眉間に皺を寄せ言った。
「……てめェのことだ。ニュースや学校の光景見て思ったんだろ。そっち側の人間になりたくねぇって。そんな軽い気持ちでヒーローになるとか頭湧いとンのか、なぁ、おい」
なんで私の考えてることがバレてるんだろう。
爆豪くんってエスパーなのかな。
「ヒーローになりたいって……それは本気なの?」
「本気です。今日決めたばかりだけど」
「ちゃんが本気で目指すなら僕は応援するよ。でも、何がきっかけで目指そうとしたのか聞いてもいいかい?」
勝さんの言葉に、私は一拍置いて静かに口を開いた。
それはさっき爆豪君が言っていた事と似たような内容。
助けられる側の人間になりたくないということ、浮ついた喜怒哀楽でヒーローを非難したくないこと。
爆豪君を助けようと飛び出した緑谷君の行動を、私は間違いだと思いたくなかった。
非難したくなかった。