第2章 それは「運命」で「偶然」で「必然」の出来事。
その時、隣のクラスから大きな音と共に「うるせえ!!」と爆豪くんの怒号が聞こえた。
野次馬の声に我慢の限界が来たに違いない。
彼を本気で怒らせたことにビビったのか五月蠅かった廊下や教室は一瞬にして静まり返った。
「なんだよ、あの態度……」
「心配してやってんのにね」
「調子乗ってんじゃね?」
文句を言いながら帰ってくるクラスメイト達。
「ヴィランに捕まって怖い思いしたのに、あんたらが茶化しに行くからでしょ。爆豪くんの気持ちも考えなよ」
「茶化してませーん。心配してたんですぅー」
「その態度が癪に障ったんでしょうが。本当バカ」
「ねぇ、そろそろHR始まるから座ったら?」
彼等のその態度に私自身少し苛ついていたんだと思う。
気付いたらそう口にしていた。
私の言葉に時計を確認する彼らはいそいそと自分の席へと戻り、うるさかった教室は少しだけ静けさを取り戻した。
昨日と似た光景が広がって、気持ち悪かった。
本当に、気持ち悪くて、気持ち悪くて、仕方が無かった。
何も見ていない人間が、何もしていない人間が、なぜ、彼を非難できるのだろうか。
助けたいと思ったその心は間違いなのか。
あの時の、緑谷くんの行動はただのエゴで、間違いで、やってはいけないことなのだとしたら、なんで人助けなんて言葉が存在するのか、理解できなくて、一日中憂鬱な気分に陥ってしまった。
いつだってそうだ。
救いを待つくせに救われなければ怒り狂って。
自分には関係ない事だからと面白半分で軽口を叩く。
浮ついた喜怒哀楽、反吐が出る。
同族嫌悪。
そうだ、これはそういう感情だ。
あの時ずっと抱いていたものと似たようなものを今感じて、それがすごく嫌なんだ。
「……………そっか」
私、傍観者になんて、なりたくないんだ。