第2章 それは「運命」で「偶然」で「必然」の出来事。
「もう少しなんだから、邪魔するなあ!!!」
「無駄死にだ!! 自殺志願かよ!!」
ヴィランが僕を攻撃して来ようとした瞬間。
誰かの手が、僕とかっちゃんの腕を掴んだ。
何が起きたかなんて瞬時に理解できなかったけど、ものすごい風圧が僕たちの身体を包み込んで、その圧にほんの少しの間、気を失った事だけは確かだ。
気が付いた後、オールマイトが右手一本でヴィランを倒したことと天候を変えたことを知り、画風も違えばスケールも違うのかと感心してしまった。
あの時は気が付かなかったけど、まさかちゃんもあの場にいたことをヒーローたちに怒られながら知った。
「じゃあ、僕、帰るね」
「うん、気を付けてね」
「ちゃんも」
治療を終えた僕は、かっちゃんとちゃんより少しだけ早く家に帰る事となった。
心残りと言えば、オールマイトにちゃんと謝罪ができなかったことくらいか。
帰ったらHPからメッセージを送ろう。
なんて考えながらトボトボ歩いていたら、後ろからかっちゃんに呼び止められた。
「てめェに救けを求めてなんかねえぞ……!!救けられてもねえ!!あ!?なあ!?一人でやれたんだ!!無個性の出来損ないが見下すんじゃねえぞ!!恩売ろうってか⁉見下すなよ、俺を!!クソナードが!!」
ついさっきまでヴィランに捕まっていた人とは思えない。
タフネス……。
かっちゃんの言う通りだ。
何かができたわけでもない。
何かが変わったわけでもない。
それを知れただけでも良かった。
これで、身の丈に合った将来を―――。