第2章 それは「運命」で「偶然」で「必然」の出来事。
それはさておき。
将来ヒーローになると決意した僕―――緑谷出久だけど、先にも述べたように、僕は"無個性"だ。
幼い頃、毎日飽きもせず見ていた、絶大な人気を誇るNo.1ヒーロー、オールマイトのデビュー動画。
以前までは、いつかは僕もこんな風になりたいと、夢と希望に胸を膨らませていた。
いつかは自分もオールマイトのようなヒーローになれると信じて疑わなかった。
自分が"無個性"だとわかった日。
この日は、この日だけは、その動画がとても遠く感じて、悔しさだとか悲しさだとか虚しさだとか、よくわからない感情が溢れて涙が止まらなかった。
超カッコイイヒーローになれるって信じて疑わなかった。
例え無個性でも、ヒーローになれるはずだと思ってた。
「ごめんねえ出久、ごめんね……!!」
だけど母の涙とその言葉に、僕は何も言えなかった。
違うんだよ、お母さん。
違うんだ。
あの時、僕が言って欲しかったのは―――。