第6章 雄英体育祭
服を脱いで下着姿になった私は、自分のお腹や腕、足を見つめる。
普段、制服で隠れている場所に残る痛々しい傷。
煙草の跡や、赤いミミズ腫れの残る外傷。
どう見ても普通のケガでできたようなものじゃない。
これを大勢の前で晒すのはとても怖い。
だって、普通じゃないから。
キレイじゃないから。
気分が沈んで昔の記憶がフラッシュバックした。
その場にしゃがみこみ、こみ上げる吐き気を必死に抑える。
吐いちゃいけない。
汚しちゃいけない。
だって、汚いから。
また、いたいことされるから。
「廻~、そろそろ始まるよ……って、どうしたの⁉大丈夫!?」
なかなか会場に来ない私を迎えに来た耳郎さんが、私の姿を見ると一目散に駆け寄って来た。
優しい手つきで背中をさすってくれる。
何度も何度も「大丈夫?吐きそう?トイレ行こう」と温かい言葉をくれる。
首を小さく振って「大丈夫」と答えるけど、大丈夫って思えるわけないよね。
「ごめん。でも、本当に大丈夫。昔のこと、思いだして、ちょっと、眩暈がした、だけ……」
ゆっくりと立ち上がり、私は目の前の衣装を手にとる。
きっと聞きたいことたくさんあるだろうな。
耳郎さんの目には私の傷が見えてるはずだもん。
聞かないでいてくれているのか、それとも聞けないのか。
多分、どっちもだろうな。