第6章 雄英体育祭
爆豪くんをちらりと見ると、動揺を隠せずにいるようだった。
轟くんは緑谷くんに背を向け「時間をとらせたな」と言って歩き出す。
そんな背中に緑谷くんは小さな声で、だけど強い意志を含んだ声で、轟くんに言った。
僕はずっと助けられてきた、誰かに助けられてここにいる、と。
「さっき受けた宣戦布告改めて、僕からも……。僕も君に勝つ!」
熱を持ったその言葉は、虚勢でもなんでもない。
緑谷くん自身の本音。
だからこそ、どこまでもまっすぐ胸の真ん中を刺してくる。
それが痛くて苦しいのに、とても温かくて優しいから私は泣いてしまいそうになるんだけど、轟くんはどうだろう。
今、どんな気持ちで緑谷くんの気持ちを受け止めているんだろう。
そんなことわかるはずもなく、爆豪くんは2人を静かに見つめ、私はしばらくその場を動くことが出来なかった。
昼休憩があと10分くらいで終わることに気が付き、私は爆豪くんと一緒に会場へと戻った。
その間、私たちの間に会話はない。
何を話せばいいのかわからなかったし、頭の中は轟くんのことでいっぱいだったから。
それはきっと爆豪くんも同じだと思う。