第6章 雄英体育祭
その疑問に答えるように轟くんは言った。
「"個性婚"。知ってるよな」
個性婚は、自身の“個性”をより一層強化して子供に継承するために配偶者を選び、結婚すること。
"個性"は両親の遺伝によることが多いから、その子供は強力な"個性"が発現する確率が高い。
第2~第3世代で頻発し、非人道的かつ人権否定にもつながるtため、世界的な問題になった。
って、中学の時に勉強したから覚えている。
それが轟くんとなんの関係があるんだろう。
「実績と金だけはある男だ……。親父は母の親族を丸め込み、母の"個性"を手に入れた」
轟くんをオールマイト以上のヒーローに育て上げることで地震の欲求を満たそうとした。
彼は、怒りに満ちた震えた声で吐き捨てる。
「うっとうしい……!そんな屑の道具にはならねぇ。記憶の中の母はいつも泣いている……。"おまえの左側が醜い"と母は俺に煮え湯を浴びせた」
ひゅっと、喉が鳴った。
全身が冷たくなりぶるぶると震える。
轟くんの左側の火傷にそんな過去があったなんて。
それでも彼は母を責めていないし、逆に父親を強く憎んでいる。
それはつまり、母親が火傷させたくてさせたと思っていないからだ。
「ざっと話したが、俺がおまえにつっかかんのは見返す為だ。クソ親父の"個性"なんざなくたって……いや……、使わず"一番になる"ことで奴を完全否定する」
彼の強い意志がひしひしと伝わってくる。
同じ場所をめざしているはずなのに、あまりにも世界が違いすぎて、震えてしまう。
でも、なぜだろう。
スケールが違うとか、世界が違うとか、そんなんじゃなくて。
轟くんのことを考えるととても悲しくなってしまう。
だって、轟くんは轟くんなのに。
それを彼自身が否定しているように見えてしまって。