第6章 雄英体育祭
そう思っていると、轟くんの低い声が壁に反響されて響いた。
私が言われているわけじゃないのに、心臓がどきりとはねたのがわかった。
「なァ……。オールマイトの隠し子か何かか?」
想像の斜め上をいく質問に変な声が出そうになり、慌てて口を押える。
どうやらそれは私だけでなく、爆豪くんも同じだったようで大きく目を見開いていた。
どうしてそんな考えに至ったのかわからないけど、突拍子もない質問に動揺を隠せない。
緑谷くんも慌てて「違うよ。そんなんじゃなくて」と否定している。
「そもそもその……、逆に聞くけど……なんで僕なんかにそんな………」
「………"そんなんじゃなくて"って言い方は、少なくとも何かしら言えない繋がりがあるってことだな。俺の親父はエンデヴァー。知ってるだろ」
轟くんは言った。
No.2のエンデヴァーは極めて上昇志向の強い人だと。
ヒーローとして破竹の勢いで名を馳せたが、生きる伝説であるオールマイトが目障りで仕方がなかった。
自分ではオールマイトを超えられない。
だからエンデヴァーは策に出た、と。
「何の話だよ、轟くん……。僕に……、何を言いたいんだ……」
緑谷くんの疑問は当然だった。
そんな話をするために、こんな人気のないところに呼び出したわけではないはずだ。