第6章 雄英体育祭
出場ゲートをくぐると、会場が割れんばかりの歓声が聞こえた。
びくっと肩が揺れ、思わず周りを見る。
一般の人達もたくさんいるけど、メディア関係の人やヒーローたちもたくさん観に来ている。
これが全国に放送されるんだ。
あの人たちもきっと観ている……。
そう思ったら、視界がぐらりと揺れる気がした。
だめだ、ここで倒れちゃ……。
口元を抑えて息を吐いて恐怖をやわらげようとした時、私の後ろにいた障子くんが大きな腕で私の身体を隠してくれた。
「しょ、じくん……」
「大丈夫か?人の多さに酔ったか?」
「う、ん……。そんな感じ」
「落ち着くまで俺の腕で隠そう」
「ありがとう。障子くん優しいね」
「ヒーロー志望だからな」
「ふふ、そうだね」
障子くんのおかげでさっきまでの眩暈や吐き気がなくなった。
いつも助けてもらってばかりだ。
それが嫌で、傍観者になんてなりたくないから、私はヒーローを目指したのに。
こんなんじゃあの頃と何も変わらない。
ふぅ、とゆっくり息を吐いてまっすぐに前を見据えた。
私がなりたいヒーローへと近づくために、こんなところで倒れてなんてられない。