第6章 雄英体育祭
それから、参加種目が決定しそれに伴う個人の準備があって、二週間はあっという間に過ぎた。
私は、どの武器がきてもいいように筋トレや走り込みをして自分の身体を鍛えた。
そして、その間に接近禁止の申立てが受理されたことを光己さんから聞き、相澤先生や他の先生にも伝えれば心底ほっとしたような表情をしていた。
特に相澤先生は包帯でぐるぐる巻きで表情はわからなかったけど「そうか」と言った声がとても優しくて、頬が緩んだ。
先生方や光己さん、勝さん、爆豪くんにたくさん迷惑をかけた分、この体育祭で伝えたい。
感謝の気持ちともう大丈夫なんだってことを。
こんな形でしか証明できないけど、本当に嬉しかったんだ。
胸の奥が熱くなって、感情が溢れだしそうになるほど。
そして、雄英体育祭当日。
1年A組の控室で待機していると緑谷くんが声を掛けてきた。
「ちゃん」
「緑谷くん」
「お母さんから聞いたよ。その……」
言いづらそうにもごもごと口を動かす緑谷くん。
私のことを気遣ってくれているのが痛いほどわかる。
「心配してくれてありがとう。伝えるのが遅くなってごめんね」
「君が謝ることなんてなにもないよ!!ちゃんが無事ならそれで……」
「でも心配はかけちゃった、引子さんにも。でも、もう大丈夫だよ。きっと。それを今日の体育祭で証明したいんだ。ありがとうって気持ちと一緒に」
「ちゃん……。うんっ、僕もだよ!!」
ぐっと拳を握り締める緑谷くんに、私もぐっと拳を握って二人で笑った。