第6章 雄英体育祭
「私に雄英体育祭を辞退してほしいって、ことですか……?」
もし接近禁止の申立てが間に合わなかった場合。
両親は体育祭にくるかもしれない。
申立ては間に合ったとしても、私を連れ戻そうとなにかしてくるかもしれない。
そういう人たちだ。
私一人のせいで雄英体育祭が中止になるかもしれない。
なら最初から"いない"ということにすればいい。
そういうことなんだろう。
ぐっと両手の拳を強く握りしめ唇を噛みしめた。
こんな形でこんな風に迷惑をかけてしまうのか。
悔しい。
「おい、なんで辞退するっていう話になるんだ」
「え……、だってそういう話だったんじゃ……」
「廻さん。僕達はね、才能ある若者の芽を摘み取ったりはしないのさ。ただ、ちゃんと危機感を持っていてほしいだけなのさ」
「危機感……」
「話をきいたところ、お前はそこらへんが低いように感じた」
今日の朝も爆豪くんに似たようなことを言われたのを思い出した。
危機感は持っていると思ったけど、何がどのくらい危ないのかっていう想像が足りないって相澤先生に軽く怒られてその後教室に戻るよう言われた。
「廻。お前は俺の生徒だ。自己判断で決めるな。その判断は俺がする」
校長室を出ようと背を向けた私に相澤先生の言葉が胸に刺さる。
喉の奥まで熱い何かがこみあげてくる。
一言でも声を出してしまえば漏れ出てしまいそうで、私はただ頷くことしかできなかった。