第2章 それは「運命」で「偶然」で「必然」の出来事。
「もう少しなんだから、邪魔するなあ!!!」
「無駄死にだ!! 自殺志願かよ!!」
ヘドロに向かって拳を振り上げた瞬間、その腕を誰かに取られた。
温かく、優しい、包み込むような大きな手。
驚いて振り向くと、そこには白い歯を見せて笑う、筋骨隆々な絶大な人気を誇るNo.1ヒーローオールマイトの姿があった。
「オール……マイト」
目の前のトップヒーローの姿に、張りつめていた気持ちが一瞬にして解け、瞳に薄い膜が張った。
あれだけのヒーローが何もできずにいたヘドロを、拳一つで終わらせ、ヘドロを殴ったその風圧は、天候さえも変えてしまうなんて。
これが、トップヒーローの力。
集まっていた野次馬たちの歓声が降り出した雨の中に響き渡る。
「爆豪くん、緑谷くん、大丈夫?」
「気を失っているだけだよ、安心しなさい」
地面に倒れる二人の身体を揺すっていると、オールマイトの優しい声が降り注いだ。
その言葉に先ほどまで張りつめていた緊張が一気に緩み、押し寄せる安堵から瞳に薄く幕が張っていくのが自分でもわかった。
「ありがとう、ございます」
「……お礼なら彼に言うといい。彼の勇気が私を動かした」
オールマイトの視線の先には緑谷くんの姿が。
どういう意味なのかさっぱりわからなくて、とりあえず、緑谷くんはあの頃と本当に変わらないな、なんて思っていた。