第6章 雄英体育祭
「落ち着いたか?」
「………はい。お見苦しいところを見せてごめんなさい」
どのくらい泣き続けたかわからないけど、落ち着きを取り戻し冷静になった頭は羞恥心と困惑でいっぱいだった。
爆豪くんの服は私の涙と鼻水で濡れている。
最悪だ、こんなみっともない姿を見せた上に服まで汚すだなんて。
血の気が引く私とは対照的に爆豪くんは気に留める様子はなくそれどころか泣きはらした私の顔を真剣に見つめている。
「あの……、本当にごめん。服もそうだし床も……」
「そんなことはどうでもいい。何があった」
「えっと……」
「てめェの様子と電話見れば大体のことは想像つく。言いづらいなら言わなくていい」
横目で外れたままの受話器に視線を向ける爆豪くんは、何も言っていないのに全てを理解したみたい。
力なく笑うと「笑うな、笑い事じゃねえのは自分でもわかってんだろ」と怒られた。
口にするのは怖くて、でも言わないと何も伝わらない。
「さっき」
床の吐瀉物を処理する爆豪くんの背中に静かに声を掛ける。
本当は私が掃除しなくちゃいけないのに爆豪くんは有無を言わさずに片付けをはじめた。
「電話があった。……お父さんから」
「……内容は?」
「刑期を終えたって。反省、してるって。二度と傷つけないって。……また、一緒に暮らそうみたいなことも言ってた、気がする、けど……。そのあとのこと、あんまり覚えてない………ごめんなさい」
「謝んな」
「うん……」
「チッ。ばばあたちに言わねえといけねえな。あと雄英にも」
「雄英にも?なんで?」