第6章 雄英体育祭
「おい、なんかあった……んか?」
頭上から声がして、身体が大きく跳ねた。
勢いよく顔をあげると人が立ってて、驚いた顔してて見られた見られた見られた見られた!!!
「ああああああああああ!!!!やだやだやだやだやだやだやだ!!!!ご、ごめんなさっ……ごめんなさいっ!!いまきれいにするからぁ!!が悪いから、いたいことしないでぇ……」
「落ち着け!!なんで急にパニックになっとんだ!!」
「やだやだやだやだ!!!もうわるいことしないから、ゆるして!!」
伸びてくる手が怖くて、バタバタと暴れて逃げようとするけど簡単に捕まってしまった。
腕を掴まれて思い切り引っ張られて怖くて怖くて泣き叫んだ。
痛いことをたくさんをされるって思っていたのに、いつまでたっても痛いことはされなくて、代わりに温かくて優しい温もりに包まれていた。
力強く私の身体を掴んでいるのに痛くない、怖くない。
「大丈夫だ、落ち着け」
耳元で聞こえる声はぶっきらぼうなのにどこか優しさもあって、安心感があって心臓の音が心地よくて私は恐る恐るその人の顔を見つめた。
「か、っちゃん……?」
「ああ。そーだよ」
「かっちゃん、かっちゃん!!」
私はかっちゃんを抱きしめまた大粒の涙を零した。
何度も何度も名前を呼べば何度も何度も返事をかえしてくれて、それがうれしくて安心して私はずっと泣き続けた。
泣き止むまでの間、ずっと私の背中や頭を撫でてくれるかっちゃんは「ここにいる、大丈夫だ。何も怖いことなんてねぇ」と声を掛けてくれて、それだけで私は救われた。