第5章 遭遇
玄関に行くと、先に帰っていたはずの爆豪くんがなぜかそこにいて頭に「?」が浮かんだ。
どうやら帰りの遅い私を心配した光己さんたちが、迎えに行くようにお願いしたらしい。
「なにしとったんだ、今まで」
不機嫌そうに歩く爆豪くんの後ろを歩く私は、どう返答しようかなと少し考える。
「………授業?」
「なんで疑問形なんだよ」
「難しい問題を、考えてた」
「……………見つかったんか?」
「ううん、見つかんなかった。納得するまで考えなさいって言われた」
「…………そォかよ」
「納得する答え、見つけられるといいな」
「それはてめェの頭次第だろ」
爆豪くんは深くは聞かなかった。
でも、頭のいい彼のことだから全部はわかっていなくてもなんとなくはわかっているんじゃないかなと思った。
じゃなかったら「見つかったか」なんて聞き方しないと思う。
「爆豪くん」
「あ?」
「マジックアワーだね」
「は?いよいよ目も悪くなったんか」
「目はいい方だよ」
「そういうことじゃねえわ、アホが」
暗くなった道を、他愛のない話をして歩く。
あの頃みたいに手を繋いで歩きたい。
ふと、そんなことを思った。
だから前を歩く彼の少しだけ分厚い手をそっと握った。
驚いた表情をして握った手を振り払おうとする爆豪くんだったけど、ぎゅっと強く握ったら苦虫を潰したような顔をした。
そのあと、何かを諦めたように大きなため息を吐いて、そっと握った手を握り返してくれた。
それが嬉しくて、私は小さく笑みを零した。