第5章 遭遇
先生の綺麗な横顔を見つめ、私は自分の中に生まれた疑問を口に出した。
ヴィランに言われた言葉がずっと引っかかって離れないこと。
自分の力はいつか人を殺してしまうかもしれないこと。
同じ力でも、ヒーローとヴィランとで何が違うのかわからなくなってしまったこと。
ぐちゃぐちゃの頭を整理できないまま口にしているから、支離滅裂だし言葉が詰まったりもして、自分でも何が言いたいのか分からなくなってしまった。
でも、先生は遮ったりしないで最後まで私の話を聞いてくれた。
「たしかに、あなたの言う通り"個性"は誰かを傷つけたり殺したりできてしまう。それは事実よ。だから今の社会は規律性になっているわけだし」
「13号先生も言っていました。厳しくすることで成り立っているように見えるって。でも一歩間違えれば"いきすぎた個性"で人を簡単に殺せるって」
「じゃあこうも言っていなかった?"個性"をどう活用するかを学んでいこうって」
「…………言っていたような、気はします」
「あなたは自分の"個性"でヴィランを撃った。クラスメイトを救けるために。ヴィランとの違いはそこにあると思わない?」
「でも、狙いがずれていたら殺していたかもしれない。そしたら私は人殺しです。ヴィランだって言われてもおかしくない」
「そこに気が付けただけ立派だわ」
「え?」
ミッドナイト先生は言った。
明確な正解なんてどこにもない、と。
プロヒーローだって、完全超人ではないから救えなかった命は山ほどあるしヴィランを誤殺してしまった事例も少なくない、と。