第5章 遭遇
広場に戻った私は、眼前に広がる光景に目を見開いた。
脳をむき出しにした化け物の下敷きになっている相澤先生は、大量の血を流している。
化物はまるで小枝を折るように簡単に先生の右手を捻り潰していた。
「せ、せんせ……」
零れた声は恐怖で震えている。
どうしよう、このままだと先生が死んじゃう。
足が竦んで動けない間にも化け物は先生の左腕も潰し、顔面を掴んで地面に叩きつけた。
だめだ、だめだ、だめだ。
助けなきゃ、でもどうやって。
ガチガチと奥歯が鳴り、涙が自然と瞳を覆う。
その時だった。
顔や細身の体にたくさんの手を付けたリーダーっぽいヴィランが「帰る」と言った。
聞き間違いかと思った。
これだけの事をしておいて、オールマイトを殺すと言っておいて、簡単に引き下がるなんて。
何を考えているかわからない脅威が襲い掛かる。
「けどもその前に、平和の象徴としての矜持を少しでもへし折って帰ろう!」
そう言った時にはすでにリーダー各のヴィランは、水難ゾーンに身を隠していた梅雨ちゃんの前まで迫っていた。
男の手が梅雨ちゃんの顔面に触れる寸前、男の動きが止まる。