第5章 遭遇
「頭のキレる人がいるってことになる」
「おい」
びくっと肩が震えた。
考え事ばかりしてたけど、今はそんな暇なかった。
私は刀を握り直し振り返った。
距離を取るために後ろに下がった時、目の前にいるのが轟くんだとわかりほっと胸を撫でおろす。
「考え事する余裕があるならどこかに消えてくれねえか。邪魔だ」
「………ごめん」
冷たい物言い。
正論だから何も返せず素直に謝った。
「轟くん」
「なんだ」
「私、みんなのところに戻る。たぶん今の私じゃ君の足を引っ張るだけだと思うから」
「そうか」
轟くんの強さはクラスでトップだ。
私がいて彼の"個性"の邪魔をするくらいなら広場に戻って加勢したほうがいい。
それに、見た限りここにいるヴィランは轟くんの足元にも及ばない。
この場を去ろうとした私に気づいた彼らが襲い掛かってきたが、刀で応戦した。
太腿や脹脛など足元を狙えば、ヴィランは地面に倒れた。
靭帯は傷つけていないけど、足って人体の部位で一番重要な部位だと思う。
立てなきゃ歩くこともできないし。
にしても、轟くんは仕方ないとはいえ私みたいなやつにも簡単にやられてしまうところを見ると、寄せ集め集団という印象を受ける。
数でどうにかしようとしたのかな。
だとしたらここまでの情報を得ていながらやることが雑すぎる気がする。
難しいことはわからないから考えることをやめた。
とにかく、急いでみんなのところに戻らきゃ。