第2章 マッシュ・バーンデッドと不思議な出会い
昼休みがきた。
急いで約束した場所に向かうと、そこには先に来ていた先輩が読書をして待っていた。
分厚い本を読んでいる先輩は僕には全く気付かないくらい熱中してる。
さっきと違って、メガネをかけていて、日傘もさしている。
日傘…
真っ白な肌と髪…
なんとなく、僕と違って育ちも何もかもがお嬢様っぽい。
こんなこというの、僕らしくないけど…
凄く似合ってるし、神秘的だ。
しばらくジィっと見過ぎて声をかけるタイミングを見失ってしまった。
「あ、ごめん、本に集中しちゃってた?」
「ごめんなさい…ぼく、遅かったですか?」
「遅くないよ。ここ座りなよ」
「失礼します」
僕を促して座らせようと先輩の隣のスペースをトントンとした。
思わずその手に釘付けになる。
指先は荒れてるし、腕は包帯で巻かれて痛々しい。
でも、先輩は隠す気がなさそうだ。
「その腕、どうしたんですか?」
「あぁ…これ?薬学研究で、自分の腕使ってたら、思いのほかひどく反応しちゃってね…。
別に、研究自体は好きでやってることだから、心配はいらないよ」
「それでも心配だ」
「君は優しいね…」
ケビン君がまたトクンって反応する。
どうしてこう、僕を惹きつけてしまうんだろう。
何をしてても、僕の記憶以外の全部が先輩に引き寄せられて僕にストッパーがなかったら、初対面なのに大変なことをしてしまいそうだ。
少しだけ距離を取って、先輩の隣に座る。
それだけで、さっき通り縋った時に感じた甘い匂いがした。
「新入生が初対面の先輩とっ捕まえるなんて、君、なかなかの大物かもね。
いや、もう既に大物要素があるっけか…」
悪戯そうに笑って僕を見る。
さっきまでの雰囲気と違って、こんな表情もするのかってお驚いた。
考えてみればそうだ。
先輩は、取り巻きらしい友達が”監督生”といっていた。
つまりはみんなに認められるべき立場にいる人だから、いろんな表情を持ってる。
そういうことなんだろう。
「アドラ寮にも友達とか知り合いいるから君の事はちょっとだけ知ってるよ。マッシュ君。
わたしは、オルカの女子寮の監督生をしてるルドヴィカ・マルドルトっていうの。
よろしくね」