第1章 依頼者に依頼する。BB!!!
山田一郎side
そして、俺たちは依頼者に依頼をすることにした。
空却と思わしき人物の話が出た時点でマジだと思った。
二人の悩みに気づけなかったことが悔しくて仕方が無い。
だが、今はそんなことを考えてる場合ではない。
事務所を出て、住居に案内する。
すると、彼女はやっぱりと呟いた。
『最近、海に行きました?』
確かに行った。三人で...
「はい。三人で行きました。海の家の準備でその家の修繕を手伝ったッス。」
『そこで拾ってきたんですね。二郎くん、三郎くん。
見かけるのは、お風呂場や洗面所、キッチンとかの水場ですよね?』
顔を青くして頷く二人に早く楽にしてやりたいと気持ちが急く。
『じゃぁ、お祓いをはじめますね。皆さん、ここ、座って貰えませんか?』
食卓の椅子に横並びに腰掛ける。
順番に肩を叩かれた途端、
見えないはずの俺の目の前に、ずぶ濡れの女が立っていた。
「っ!!」
『落ち着いて。これをここに塗って、それで...っと...
よし。手を合わせて、目を瞑って。
鼻から息を吸って、口から吐いて。』
こんなのが家の中に居て、ましてや兄弟達の目に映ってたんだ。
どれだけ怖かったことか。そう思いつつも、
彼女の言う通りにすることで、気分は落ち着き、
目を閉じたことでやつの姿を見なくて済む分、
恐怖心は少なくなる。
何かを唱える彼女と苦しげに呻く声が聞こえる。
時間が長く感じた。
淡々とお祓いをしているだろう彼女に
必ず太鼓判を押して、繁盛させてやらなければと心に決めた。
しばらくして
『終わりましたよ!目を開けてください。』
「す、すごい!居なくなってる...」
「空気が綺麗になったような...体も凄く軽く感じます!」
二郎も三郎もどこかスッキリした顔をしていた。
それもつかの間、二人は顔を歪ませて、涙を溢す。
『よく、頑張りましたね。』
そう微笑む彼女に、
当然依頼された内容の料金を請求するはずもなく。
むしろ、こちら側がいくら払っても足りないくらいの
借りが出来たなと思わずにはいられない。
事務所に戻ってお祓いの料金を聞くと、
口コミお願いしますね!と返された。
よろず屋の全勢力を持って、広げようと思う。