第1章 初恋は破綻する。
『悟、ーーーーちゃん転校したんだって。』
夏休みで、学校が無い間に、ーーーーは転校していった。
蝉がうるさくて、蒸し暑く着物が張り付いて気分が悪かった。
だけど、母親の言葉で、さっきまで感じていた不愉快さが、虚無に落ちた。
『……もうやだぁ…。』
最後に泣いて自分の元を去ったーーーーが脳裏に浮かんだ。
あの時、どうすればーーーーは逃げなかったのか。
まだ小学生だった自分には、どうしても想像する事が出来なかった。
ただ急に目の前から消えた女の子。
風見ゆらが紛れもない、自分の初恋だった。
「五条起きて!!ちょっと付き合って!!」
ガラッと休憩していた空き部屋のドアを開けられて、硝子の声で悟は夢から覚めた。
「……何?」
クイッの目隠しを上げて、悟は硝子を確認すると、面倒くさそうな顔をあからさまに見せて来た。