依々恋々 -Another story(under)-
第17章 気持ちのベクトル
「可愛い顔して」
すうすうと寝息を立てている顔を、背もたれに手をついて見下ろす。
黒い画面のテレビに違和感を感じると、電源はついているようだった。リモコンで操作すると、どうやら映画を見ていたらしい。
「寝落ちしちまったのか」
顔にかかる髪を払い、ソファにかけられていたブランケットで包んでやる。
ふとキッチンを見ると、五徳に小さな鍋があった。
蓋を上げると、透き通ったスープのいい匂い。
いつも飲み会がある日に会えると作ってくれる、海鮮系の出汁をベースにした野菜たっぷりのスープ。
カップに一杯取り分け、レンジで温めた。
「うまい」
ふー、と吐息で冷ましながら飲む。
空のカップを流しに置き、リビングの🌸の傍らにしゃがみ込む。
シャワーは浴びたのか、とメイクが落とされた頬と蜂蜜の香りの髪を撫でる。
引き寄せられるように薄く開いた唇にキスをする。
「んや」
くすぐったかったのか。
くるん、と身を返して背を向けた🌸。
なぜか、その行動にムッときてしまい、ソファから抱き上げた。
気持ちよく寝ている顔に一瞬躊躇ったが、んう、と寝ぼけながらも肩口にすり寄ってきた🌸を寝室に運ぶ。
ネイビーのシーツが掛けられたベッドにおろし、わずかに唇が開いた隙に舌を入れ込んでキスをする。
「ふ、あ、んぅ」
違和感に気づき、うっすら開いた瞳に入り込む。
「シャ、ン?帰ってたの?」
おかえりなさい、と寝ぼけて抱きついてきた🌸が着る、寝巻き代わりの緩いシャツを捲り上げる。
「ただいま。スープ、美味かった」
ありがとう、と背を這わせた手で下着の留め具を弄る。
「んぅ、えっち、したいの?」
寝ぼけた声で、えっち、なんて言われてアルコールで火照った体が性欲でより熱を帯びる。
「🌸が可愛いから、我慢できない」
ちゅ、ちゅ、と何度も軽いキスをしながらシャツと下着を捲り上げる。
「シャンは、元気ねぇ」
仕方ないなぁ、というように笑う🌸の衣服を脱がせてベッドの下に落とす。
「いつまでだって抱くさ」
酒精混じりの吐息に、お酒臭い、と笑った首筋に甘えるようにすり寄った。
✜