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依々恋々 -Another story(under)-

第16章 君欲



「なににしようかなぁ」
壁にはめ込まれたテレビに内蔵された動画配信サブスクを漁るジウ。

キンコーン、となったルームベルにシャンクスが立ち上がる。

真っ白なシーツの上で、真っ白なローブを身に纏い、白い脚をパタパタさせているジウを一瞥し、ベッドルームを出た。

 ✜

ボーイがテーブルセットをするのを眺めていると、シャン〜、とジウが顔を出した。

「ねえ、ヒュー・グラントがロンドンの本屋さんでジュリア・ロバーツが女優さんのお話のタイトルが思い出せないの」
「...ジュリア・ロバーツはハリウッドの女優だろ」
「そうじゃなくて!お話の設定っ」
何の映画だ?と考える。

「『ノッティングヒルの恋人』ではないでしょうか」
「ん?」

シャンクスの視線を受けたのは、食事を運んで来たボーイ。

「あ!それです。ありがとうございます」
ノッティングヒルの恋人ね、とスッキリした表情でベッドルームに戻るジウ。
「映画に詳しいのか?」
シャンクスに声を掛けられたボーイは、少々かじっているだけです、と笑った。

「お食事の準備が整いました。不足するものなどあれば、何なりとお申し付けください」
「わかった」
失礼します、とカートに手をかけたボーイ。
「ああ、待ってくれ」
「はい?」
カウチのジャケットを持ち上げ、内ポケットを漁る。
「取っておけ」
ボーイの制服の胸ポケットに差し込む。
「ありがとうございます。お食事後終わった際は、お呼びください」
失礼します、とカートを押してドアへ向う。

ボーイが部屋を去ると、ベッドルームのジウの元へ向かう。
えっと、とテレビのリモコンを操作するジウを抱き上げた。
「映画、」
「見始めたら食事、忘れるだろ。映画は逃げねぇが食事は冷める。先に食え」
「はーい」

丁寧にセッティングされた料理に、すごーい、と目を細める。

「なんだかお姫様になった気分」
「安上がりな姫さんだな」
「あのねぇ、出張先とはいえ、ラグジュアリーホテルを渡り歩くどこかのベンチャーの社長様と一緒にしないでもらえます?」
「たかが出張でこんなホテル取るか。大概、シティホテルだ」

ビジネスですら無い、と言うジウの口元に、サラダを巻いたスモークサーモンを刺したフォークを差し出した。
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