依々恋々 -Another story(under)-
第16章 君欲
クチュクチュと言う秘部から伝う水音に、ぐす、と鼻を啜る音が重なる。
「馬鹿じゃないもん。えっちでもないもん。実用品だもん」
半鳴き声のジウにゾクゾクする。
(いじめすぎたか)
「わかった、悪かった...実用品?」
ベッドでいじめられてグズグズするジウの身を起こす。
「だって、フルバックじゃラインでちゃうし、タイト気味だからペチコート履くと形崩れちゃいそうだったし」
「服、変えりゃよかったろ」
ムッ、とした顔で振り返ったジウ。
「久しぶりに会えるんだから、シャンが選んでくれた服でお出迎えしたいって思っちゃダメっ?それにっ、あなたが選ぶ服は全部タイトデザインじゃない!下着のラインに気を使うようなのばかりでっそれなのに...ひどい...」
めそめそと泣き出してしまったジウに、(しまった)と慌てて身体を起こす。
「悪かった。からかいが過ぎた。ごめんな」
可愛かったから、つい、と許しを請うキスを顔を逸らして拒絶された。
「ジウ、」
「...底意地悪いシャンは、キライ」
「ぐ、」
ジウからの「キライ」に弱いシャンクスを知っているジウは、シーツで肌をぐるりと隠してしまった。
「それを知っててわざと楽しむシャンは、もっとキライっ!」
「っわかった!俺が悪かったからっそう何度もキライ、キライ言うなっ」
「あっち行って!」
ピクリとも動かない丸くなったシーツの、頭があるであろう辺りを撫でる。
「ジウ」
返事が無く、頭冷やしてくる、とベッドから降り、カウチのジャケットから煙草とライターを取り出す。
「帰りたいなら、送ってやるから」
「タクシーで帰るもん。ホテルの前にいっぱいいたもん」
「女が夜にひとりでふらつくもんじゃねぇ」
煙草を一本咥えて、ルームサービルを呼び出す受話器を取る。
「紅茶とフルーツを盛り合わせでくれ。酒はいい。アイスのストレート...ガムシロップを一つ、別に添えて...部屋の前で」
ガチャン、と雑に切る。
「風呂、溜めとくからな」
遠ざかっていく気配に、ふん、と薄暗い布団の中で鼻をすすった。