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依々恋々 -Another story(under)-

第16章 君欲



既読されないメッセージに、疲れてるかな、とスマホの画面を伏せてテーブルに置く。

空港から直結しているカフェの隅の席。

(ほぼストーカー...)

自分の行動に、いや!そんなはずないっ、と首を横に振ってカップの紅茶を飲む。

滑走路を望む窓ガラスに、また新しく飛行機が着陸した。
(連絡無かったら帰ろ)
会いたくてきちゃった、と到着ゲートで待ち構える勇気はなかった。

カウンターに置いていた携帯がけたたましく震え、慌てて取り上げる。

-ジウ、どこにいる?-
落ち着いた声に、(疲れてるかも)と、目を伏せる。

-会いたいんだ-

控えめな声に、どうしたの?とバッグと伝票を手に持った。

-部屋か?-
「あの、実は空港に、いて」
-どこだ?-
バン、という音と少し響く声。
「もしかして、もう車?」
-どこにいる?-
どこか焦ったような様子に、目の前のゲートナンバーを伝える。

-そこにいろ-
「は、あ、うん」
切られると思われた電話はつながったままで、無言の向こうから空港内のアナウンスが聞こえてきた。
どっちからだろ、と耳に携帯を当てたままくるくると当たりを見回す。
「シャン、」
どこ?と問いかけた時、後方から包む体温にふわりと香った深い海の香り。


「おかえり」
-「ただいま」-

左右の耳元から聞こえる声に、強く抱きしめる腕を撫でる。
ダークベージュのスーツは、前に店舗で一緒に受け取った記憶のある新しいもの。

「ジウ」
はちみつの香りの髪に頬を寄せるシャンクス。
ザリ、と伸びた無精髭が擽ったくて身を捩るジウをより強く抱き締める。

「苦しいよ」
肩口の髪をさら、と撫でる。
いつもなら、同じ蜂蜜の香りがするはずの髪からは、さっぱりとしたソープの香り。

「寂しかったの?」
よしよし、と髪を撫でるジウを抱き締めるシャンクスの周りには、すでに人はいなかった。

「お疲れ様」
力強い腕を撫でると、くるりと身体を反転させられ、また、強く抱き締める腕

「おかえりなさい」
硬い胸板に頬を寄せるジウの頭を抱き寄せ、会いたかった、と腕が余るほどに小さな体へと縋った。

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