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依々恋々 -Another story(under)-

第16章 君欲



 -当機は間もなく✳✳空港へ着陸いたします-

寝るでもなく閉じていた目を薄く開け、小さな窓から見え始めた見慣れた街並みを見下ろす。

確か、と少し目線を動かし、ジウの部屋がある辺りを見る。
(スカイダイビングでもすれば、ジウの部屋に直行できるか?)
あのアパートの屋上は着陸できるほどの広さがあるだろうか、と馬鹿げたことを考える。

徐々に降下し、滑走路が見えてくる。

さっさとタラップを駆け下りれば、そこがジウの部屋の前にならないだろうか、と時代が変わっても猫型ロボットが定番に乱用するピンクの扉を思い浮かべる。
いや、それより頭に装着するだけで使用者の自重を無視して低速飛行する手のひらほどに小さなあのプロペラ機の方がまだ実現性はあるかもしれない、と考えつつ、(ああ、だいぶ疲れてるな)と広めのシートに沈む。

(吸盤式なんだろうか?
しかし、あの大きさでヤツ本体が運べてることを考えると、吸盤一つで長時間の飛行が可能なのか?
あの「本体」の重量はどのくらいなんだろうか?そもそも、何製だ?『猫型ロボット』は鉄製か?それか超軽量の未来素材?そういえば、なんかちゃんとした役職?かあったような...?特定?特定..なんとか員、とかだったか?)

今よりウタが小さい頃、一緒にアニメや映画を見たと思うが、詳しい設定を思い出せない。
なんだったかなぁ、と目を閉じて考えていると、機体が揺れる。

機体を降りて預けた荷物を受け取る。
慣れた空港のはずなのに、(無駄に広いな。早くジウに会いたいのに)と八つ当たりをぶつける。

(ジウを抱きしめて、キスして、ジウの料理食って寝たい...いや、その前に抱く。2回する...
あー、またジウに加減を知れと怒られるな)
それも覚悟の上で、と早足に車へ向かう。

後部座席に荷物と革靴と靴下を投げ込んでサンダルに履き替える。
脱いだジャケットのポケットから携帯を取り出すと、機内モードのままだったので解除する。

ヴー。

手中で震えた媒体が伝えるメッセージの送信者。

 -今日帰ってくるんだよね。
  空港についたら連絡欲しいな-

ごめんね、と目を潤ませて羽先を合わせるシマエナガに、なぜ「ごめんね」?と運転席に乗り込んで、電話帳の最愛の名前をタップした。

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