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依々恋々 -Another story(under)-

第12章 Drager 〜Another Side


バタン、と扉が閉じた映像を止める。

別の画面に目を移した。
エレベータから一人の客が降りた。キュルルッ、と音を立てる映像。
同じように、エレベータからふらつきながら出て、なんとか部屋に入った彼。その彼と同じ足取りで、彼が入った部屋のベルを鳴らす女の客。
開いた扉に驚いて、少し身を引いた彼女を引き込む手は左手。
扉が閉まる直前で映像を止めて拡大すると、微かな隙間から見える袖のボタン。

「ねえ、エレベータかロビーの映像頂戴」
お待ちください、という声に、パソコンを操作して、部屋に引きずり込まれていった姿を拡大する。
顔を確かめようとするが、画像が荒く識別できない。
「チッ」
使えない、と舌打ちすると、お待たせしました、と別のパソコンを持ってくる部下。
「ロビー及びエレベータホールの映像です」
少し視線を残して、そちらに向く。

手元に目線を落としながらドアをくぐる女。
黒髪を下ろし、OLといった風貌。
一見、コールガールには見えない。
迷いなく、彼が急遽取った部屋に向かっている。

「呼び出したの?」
どんな関係の女、と睨みつける。
未だに出てくる様子がない事に、部屋の中で起きていることは明白で、ギリ、と唇を噛む。
「この女っ、調べて!特に男関係っ!」
彼との接点は何なんだ、と自分が行くはずだった部屋から出てこない彼女にイライラする。

そこから動きのない映像に、舌打ちする。
部屋に乗り込んでみようか。薬が効いているなら、十中八九、あの部屋では性行為が行われている。
欲に飲まれて乱れる彼を見たい欲と、あの状態でもわざわざ性欲をぶつけてしまうために呼んだ存在に嫉妬。

後ろで部下がインカム越しになにか話していた。
「お嬢様。隣のお部屋が空いており、押さえております」
「よくやったわ!向かうわよっ」
部屋には、まるで警察の逆探知のような設備が準備されていた。
天井の空気口から、ぬっ、と男の顔が逆さまに降りてくる。
「カメラは難しいなっ!ベッドとの位置が悪い。盗聴器は仕掛けたが、うまく入るか怪しい」
「彼の声が聞ければいいわ」

せーのっ、の声で天井から放られたヘッドホンをキャッチすると、ソファに腰掛けて装着する。

「聞かないほうが身のためかもよ?」
「早く繋ぎなさい」
へいへい、と肩に提げた機材に繋ぐ。
ザッジジッ、という接続音に少し、顔をしかめた。
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