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依々恋々 -Another story(under)-

第12章 Drager 〜Another Side




『ターゲット、会場を出ました』
インカムからの声に、ニッコリと笑う。
「追尾して。彼の行き先がわかったら即時報告を」
『了解しました』

シャンパングラスで炭酸入りの国産リンゴ100%ジュースを飲む。
「お祖父様、ちゃんと【お薬】飲ませてくれたかしら?」
それだけが心配だわ、と溜息をつく。

再び受信した無線に飛びつく。
『ターゲット、ホテルシー・ブリーズに入店...部屋を取っていたようですね』
「ホテルシー・ブリーズね!すぐに向かうから、私がつくまでに彼の取った部屋を確認しておきなさい!」
『了解しました』
やはり、持つべきものは多少の悪さができる祖父と有能な部下、とグラスを飲み干す。

「車を出して!『ホテルシー・ブリーズ』へ」
走り出したリムジン。
「待ってて、私のBalle rouge」
スモークの貼られたリムジンの窓に、ニッコリと微笑む真紅の唇。

  ✜

ゆっくりと止まったリムジン。
扉が開かれるのを待つ間に、コンパクトでメイクを確認する。
開かれた扉から黒服に手を取られてホテルの前に降り立つと、無線先の部下が駆け寄ってくる。

「それで、彼はどこのスイート?」
エナメルのスクエアヒールでエントランスに入る。
「あ、あのっそれが...」
言いよどむ部下を睨み上げる。
「分からなかったと言うの?」「いっいいえ!」
慌てて首を振る部下。
「部屋は、わかりました。しかし、我々で見張っていたところ、数分前に来客がありまして」
「来客?」
ピクリ、と形のいい眉が跳ね上がる。

「はい、あの、女性の方が」
「なんですって?!」
どういうことよっ!と部下の襟首を掴む。
「わ、我々にもどういうことかは...20代前半の女性で、ターゲットは彼女を部屋に招き入れ、出てきていません」
「女と、出てきてない...?」
まずい、と下唇を噛む。
「監視カメラは?」
「各部屋にはついていませんので、ロビー、エレベータ、通路のものなら」
「今すぐ見せてっ!」
はいっ!と駆け出した部下に、舌打ちをする。

持て余した性欲にコールガールでも呼んだのだろうか。
それなら、わざわざこんなSランクの高級ホテルに部屋を取るだろうか。
「想定外だわ...」
まさか彼に心に決めた人がいるはずないし、と急ピッチで用意されたモニターの前に掛けた。
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