依々恋々 -Another story(under)-
第9章 aphrodisiac-媚薬-
週末。
店で食事をしていた🎀と🌸を迎えに行った。
「シャンクスさんっ」
「なんだ?」
車に乗る前に化粧室に寄った🌸を待っていた時、🎀が差し出す拳。
「あげるっ!」
なんだ?と掌を出すと、コロリと落ちてきた褐色の斜光処理がされたスクリュー管瓶の小さなラベルに目を通す。
「おい、コレ...」
「割と効くよ!」
そんなサラッと渡すものじゃないだろう、と訝しげな目を向ける。
「大丈夫っ。お医者様のローくんが『使ってよかった』って言ってたから安全だよっ」
突然、恋人の悪友カップルの痴情を知らされて、どう反応すれば、と苦笑う。
「ごめんねっ待たせちゃって」
背後からの声に、手中のそれを慌ててポケットに入れ込む。
大丈夫だよー、と手を振る🎀。
「どうかした?」
心配そうに見上げる🌸に、なんでもないさ、と笑って二人を近くに駐めた車へと誘導した。
✜
🎀をマンションに送り届け、T.O.Gへと帰ってきた。
いつも通り、エレベータに乗り込み、ポケットの小瓶をどうしようか、と思考する。
くい、と袖を引かれて目線を下げた。
「さっきから呼んでるのに、」
悲しげに眉を下げている🌸の髪を撫で、ごめん、と笑ってみせる。
開いた扉を抜け、おいで、と優しく手を引く。
「🎀となに話してたの?」
「ん、ちょっと、な」
カードを翳して部屋に入る。
「言えないこと?」
不安げな🌸を、そんなんじゃない、と抱き寄せた。
「じゃあ、教えて?」
ジャケットの袖を掴んで見上げる🌸。
その瞳に押し黙ってしまうと、🌸はむっとした顔でトン、とシャンクスの胸を押した。
「もう!知らないっ」
ツン、として部屋に入る🌸の腕を掴む。
「悪い、話すから」
「いいっ!知らないもん」
ほんのりと赤い頬で、べぇっ、と舌を出す。
🌸が欲しがるわけがないとわかっていて、ポケットのそれを取り出し、巫山戯た代物だ、と笑う。
「アプ、あふぃろでぃ...んん?」
小さな英文を必死で読み解こうとしている仕草が可愛らしい。
「aphrodisiac」
「あぷりじあ?」
「興奮剤だ。一種の媚薬だな」
「びやく...」
へえ、と小瓶を見つめる🌸。