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依々恋々 -Another story(under)-

第6章 Rainy Night,Rainy Morning



「お客さん、着きましたよ」
雨に濡れたサイドガラス越しに見慣れた建物。
割増運賃を払って、濡れるのも気にせずに開いたドアを抜けると、パシャ、と革靴が濡れる。
ジャケットどころかワイシャツまで一瞬でずぶ濡れ。

半分濡れた階段に、足跡と水滴による水玉ができる。
チャリ、とカーキーと同じリングにかかる鍵を取り出す。
解錠された扉を開けると、そこは暗闇。

当たり前か、と濡れた靴下で廊下に痕跡を残す。
浴室に寄って脱衣所でジャケットと少し泥がはねたスラックスを脱ぐ。
濡れたワイシャツと靴下も脱ぐと、下着一枚で奥の部屋へと向かった。

照明が落とされた部屋。
ローテーブルに鍵や携帯を置くと、奥のカーテンを捲る。
壁角に置かれた布団でスヤスヤと寝息を立てているジウ。
外し忘れた腕時計をチェストに置き、少しずれた布団を整えて、アルコールで熱る体を横たえた。首の隙間から腕を差し込んで小さい頭を抱え込み、腰を抱き寄せて脚を絡める。

「っんん」
モゾ、と動く頭にキスをする。力なく背中を撫でる温かい手。その手を取って、掌にキスをする。
「ん、シャン?」
トロン、と開いた瞼。小さい鼻先に自分のそれを擦り合わせて、ただいま、と囁く。
「おつかれさま」
力なく笑って、ゆるゆると撫でられる後頭部。
「シャワー、浴びた?」濡れてる、と髪の表面に触れる。
「雨、降ってる」
「傘、なかったの?」
起き上がろうとする体をきつく抱いて閉じ込める。

「タオル、拭かなきゃ」
「あとでやる」
寝ちゃうよ?という返事はジウが寝てしまうという意味なのか、自分が寝てしまうという意味なのか。
温かい布団の中で温度を取り戻していくからだ。
「ちゃんと、お布団被ってる?」
背中出てない?と気遣うジウがすり寄ってきて、少し、布団を寄せてくる。

「ジウがはみ出すぞ」
寄せてくれた布団を戻すと、いいのー、とまたシャンクスの方に寄せて、自分の体もすり寄せる。
「私には、シャンクスがいるから」
温かいんだよ、と目を開けられないまどろみの中で微笑むジウ。
「確かにあったけぇな」
「ふふ、でしょ?」
いつもよりとろみのある声が、酔っ払ってふわふわする頭に心地良くて、絡めた足で引き寄せた。
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