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依々恋々 -Another story(under)-

第5章 HOTEL XXX


「朝帰りだっ」
「どこに感動してんだ」
うわー、と頬に手を当てるジウの手を取り、ケタケタと笑う。

「とりあえず、一回帰るか。」
着替えたいだろう、と昨日の通勤服のままのジウを見やる。
「そうだね。朝ごはんは?」
「んー、できればジウのメシが食いたい」
昨日食えてないし、と暖簾が引かれた寿司屋の前を通る。

「家、なにがあったかなぁ」
「スーパー寄るか?」
そうしようかな、と唇を撫でる手。コインパーキングに停めたままの車に乗り込む。

「これ、好きね」「うん?」
「手、いつも握ってる。片手運転、難しくない?」
「気にしてなかったな」
握り直した手に、幾度か力を入れて小さな手を握る。
「握ってないほうが落ち着かない」
指を絡めて持ち上げると、甲に口づけをする。
いつものように、自身の腿へと下ろそうとした手を持ち上げられると軽く引き寄せられ、浅焼けた広い手の甲に柔らかい感触。

珍しく積極的な彼女に緩む口元を隠しきれない。
パーキングを出て、ゆっくり減速して信号で止まると、ジウに向き直ろうとしたシャンクスの耳に吐息の感触。掠めるように唇で輪郭に触れてから、耳の裏あたりに柔らかな吸入の感触。

「キス、されるのも気持ちいいけど、するのも気持ちいいね」
身長の関係上、少し見上げるジウの目に、ゴクリ、と喉が鳴る。
ペダルを少し強く踏み込み、脇道に入る。いつも少し回り道するルートを避け、最短のルートを取る。
「こっちじゃ、スーパー寄れないよ?」
不安げな顔をチラ、と見る。
「キスの意味に応えるほうが先だ」「キスの、意味?」
ジウの手を持ち上げると、手首にキスをする。

調べてみろ、と言われて携帯で検索エンジンを開いたジウは赤面して狼狽えた。

「違うっ!その、そうじゃなくてっ」
「無意識だったのか。本能で求めてるんだな」
「ち、違うったら!」
忘れてー、と解こうとする手を引き寄せた。少し汗ばんでいる掌にちゅ、ちゅと唇を落とす。

「お、お手柔らかに、お願いします」
睫毛を震わせているジウの髪にキスをした。
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