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依々恋々 -Another story(under)-

第5章 HOTEL XXX



「ちょっと寄るぞ?」
コンビニを指差すシャンクスに、うん、と頷くジウ。
食事で少し緊張が解けたように見えたジウの手を取る。ギュッと握り返される手を引き寄せた。


ボトル入りの紅茶とコーヒーを買って再び歩き出す。

「リトルシガーのやつとは行かなかったのか?」
「うん。お互い一人暮らしだったし、彼は3交代だったから宿泊で出かけるってできなかったの」
「なるほどな」
ジウのすべてを知りたいと思う一方で、職業柄、制約があった彼とどんな付き合いだったのか。その部分は、聞きたいような、聞きたくないような、聞いてしまうと墓穴を掘る気もして、いつもうまく聞き出せないでいる。

「だから、なんか行くきっかけが無くて。その、ラブホテルなんて」
着いてもいないのに、うう、と赤面するジウを見下ろし、かわいいなぁ、と手を握る。
「じゃあ、ジウの初経験だな」
「...違う意味合いに聞こえてくるけど」
シャンクスがケタケタと笑うと、もう、とジウの表情が少し和らいだ。

「この辺り、来たことないかも」
「駅からは少し離れるからな」
行き先は彼任せ。
一応、最終目的地に向かっているらしい。
ゆっくりと歩みを止めた。
目線で示された建物を見上げる。

「おお〜」
「どんな感想だよ」
ふはっ、と吹き出し、行くぞ、と手を引かれる。
「人、いないね?」
「基本的に無人だぞ?」
そうなんだ、と雰囲気のある廊下を進むと、少し広くなったスペースに、壁付けの画面が見える。
「どの部屋がいい?」
「選ぶの?」
頷くシャンクスに、えっと、と目を彷徨わせる。

「暗くなってるところは?」
「利用中か清掃中。ライトがついてる中から選ぶんだ」
「んー」
何が違うんだろう、といくつかの部屋を見比べる。
一つ、気になる部屋を見つけたが、禁煙室、という文字に目線を逸らす。
「じゃあ、このお部屋」
喫煙室の中から、丸いバスタブに惹かれて指さした部屋のボタンを押すと、部屋番号が表示される。
「3階な」
こっち、と手を引かれてソファのあるスペースを抜ける。

「あのソファって?」
「待合か?部屋が開くのを待つスペース」
待つんだ、と少し驚くと、イベントごとの日は埋まりやすいと教えてくれた。
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