• テキストサイズ

依々恋々 -Another story(under)-

第5章 HOTEL XXX


気軽に入れそうにはない門構え。
芍薬に入る時と変わらないテンションで、やあ、と手を上げたシャンクスに、カウンター内にいた大将らしき男性がいらっしゃい、と出迎えた。

「久しいね、赤髪の旦那」
少し遅れて入ると、カラ、とシャンクスが扉を閉める。
おや、と首を傾げる店主に会釈すると、いらっしゃい!と一つ明るい声が返ってきた。

「こんばんは。お邪魔します」
どうぞ、と勧められたカウンターに並んで掛ける。
「ジウ、食えないもの、あるか?」
ううん、と首を振ると、どうぞ、と出される温かいお茶とおしぼり。
「いつも通り、任せてくれるかい?」
「ああ、頼むよ」
あいよ、と笑うと、支度を始める店主。

「珍しいね、旦那が女の子を連れてくるなんて」
コレ?と小指を立てる仕草に、らしさを感じる。
「婚約してるんだ」
「ええっ?!」
彼の言葉に手を止めて、本当かい?と身を乗り出す。
「こりゃ、たまげた。今日は気合い入れんと!」
嬉しそうに笑う店主は、期待してくれ、とジウに大きな笑顔を見せた。

  ✜

締めに出されたアラの味噌汁に、ほう、と息を吐くと、お猪口の酒を飲み干したシャンクスが柔く笑う。
「どうだった?」
「すっごくおいしかった」
ありがとうございます、と向かいの店主に会釈すると、嬉しそうな柔和な笑み。

「いいお嬢さんだ。こう美味しそうに食べてくれると、握りがいがあるってもんだ」
美味しかったのは間違いないが、そんなに顔に出ていただろうか、と顔に触れる。最後の酒をお猪口に注いだシャンクスが、くくっ、と喉の奥で笑うので、ちょっと恥ずかしくなって俯いた。
「確かに、ジウはうまそうに食うから、見てて酒が進む」
少し赤らんだ顔で酒の水面を見つめると、くい、と一気に傾ける。

〆てくれ、と言うシャンクスに、あいよ、と笑う店主。

「いつでもおいでよ。サービスするよ」
「俺には無しかぁ?」
ちょっと巫山戯る彼に、女の子限定だ、と笑った店主。
「ごちそうさまでした」「またおいで」
手を引くシャンクスが、じゃあ、と手を上げ、ジウは一礼する。

カウンターに残されたお猪口の酒はキレイサッパリ飲み干されいる。店主が持ち上げた徳利に酒が残っていた。いつもなら一滴残らず飲み干していくのに、と久しぶりに見せた彼の少し硬かった表情を思い出して、ふと笑みを零した。
/ 98ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp